鮫島慶太鮫島慶太

世界大学ランキング

先日、以下のような記事を見かけました。
お読みになられた方も多いのではないでしょうか。

主に外国人留学生を対象に、受験も授業も英語で行う東京大教養学部英語コース(PEAK)への合格者の入学辞退率が年々高まり、2014年度合格者(同年10月入学)の7割近くが東大を蹴って外国の有力大に進学したことが28日分かった。文部科学省が日本の主要大学の国際化を急ぐ中、最難関大が「滑り止め」にされる現実は、優秀な留学生獲得を目指す世界の大学間競争の厳しさを示しており、関係者は危機感を募らせている。

「東大が滑り止めにされ、7割が東大を蹴った」

というようにセンセーショナルに報じられ話題になりました。

2015年のTHE 世界大学ランキングを見ると

1 カリフォルニア工科大学 USA
2 ハーバード大学 USA
3 オックスフォード大学 UK
4 スタンフォード大学 USA
5 ケンブリッジ大学 UK
6 マサチューセッツ工科大学(MIT) USA
7 プリンストン大学 USA
8 カリフォルニア大学バークレー校 USA
9 インペリアル・カレッジ・ロンドン UK
10 イェール大学 USA
11 シカゴ大学 USA
12 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) USA
13 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ) スイス
14 コロンビア大学 USA
15 ジョンズ・ホプキンス大学 USA
16 ペンシルベニア大学 USA
17 ミシガン大学 USA
18 デューク大学 USA
19 コーネル大学 USA
20 トロント大学 カナダ
21 ノースウェスタン大学 USA
22 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL) UK
23 東京大学 日本

「日本の中で大いばりの(笑)東大は世界では23位程度なんだ」

そんな妬みの裏返しにも似た感情を煽るかのような報道に違和感を感じました。

「日本TOPクラスの進学校からも東大ではなく、海外の大学を目指す学生が
増えている。このままでは日本の大学はローカル化してしまう!大学のグローバル化
が緊急の課題である!」

そういう論調の記事も最近よく目にします。

皆さんはどうお考えですか?

私はまずランキングを見て、単純に「あれ?」と思ってしまいました。

上位はUSAとUKが独占?
非英語圏ではスイスの大学が13位に入っているだけ。

一体どうやって大学の価値を測っているのだろう?
素朴な疑問を持ったので少し調べてみました。

Our 13 performance indicators are grouped into five areas:

•Teaching: the learning environment (worth 30 per cent of the overall ranking score)
•Research: volume, income and reputation (worth 30 per cent)
•Citations: research influence (worth 30 per cent)
•Industry income: innovation (worth 2.5 per cent)
•International outlook: staff, students and research (worth 7.5 per cent).

http://www.timeshighereducation.co.uk/world-university-rankings/2014-15/world-ranking/methodology

各項目についても詳しく解説があるのですが、率直に感じたのは

① 論文の引用数などはインターネット時代の現代では英語が圧倒的になるのは当たり前
② 収入部門については国の経済力や金融資本主義の力がものを言う
③ 研究者による評価についてはどの程度広い学問分野を扱ったか疑問
④ 大学において留学生の交流は魅力だが、数値で乱暴に測るべきものなのだろうか?

といったことです。
簡単に言えば、この評価の仕方だとどう考えても英米の大学、特にアメリカの大学が有利になるのは
当然ではないか・・・。

ハーバードをはじめとするアメリカの大学の学費は日本の国立大の8倍程度と高いし、
資産運用額、内部留保金も日本の大学とは桁が違います。

もちろん、お金があれば、それだけ優れた研究が出来る可能性が高くなる学問分野もあるわけで
お金を妥当な物差しとして活用すべき場面もあるでしょう。

しかし、それぞれの国の国民の教養を高めて豊かにする役割、国や世界全体を良い方向に
変えていく人材を輩出する役割など、大学にはお金では測れない価値もあると思います。
というか、大半の人間にとって、大学の価値はそういうものではないでしょうか?

ランキングをさらに見ていくと、日本の大学も下位に出てくるのですが
その並び方を見ると、科研費の額とほぼ一致することも分かります。

色々な評価基準で多面的に評価していると言いながら、ランキングのかなりの層で
お金以外の要素がランキングに反映されるような測定にはなっていない・・・。

東大をはじめとする大学が海外からの留学生の確保にやっきになっているのが
こうしたランキングの順位を上げようという動機からだとすれば、少々下品ではないか?

僭越ではありますが、そうしたことを感じてしまいました。

皆さんはどのようにお感じになりましたか?

この記事を書いた人

ESN英語教育総合研究会

ESN英語教育総合研究会

ESN英語教育総合研究会は、次世代の英語教育ファシリテーター育成を支援するためのポータルサイトです。関東と関西を中心とした全国規模の研究会の実施や、教材や授業実践などの情報交換を通して全国の先生方のネットワークの構築を目的としています。英語教育に関わる各種研究情報や研究員のブログなどを配信いたします。

この記事と同じカテゴリーの記事

女子教育

女子教育研究会FEN 第12回オンラインイベント 「女性研究者のWell-beingをめぐって」

女子教育

女子教育研究会FEN オンラインイベント No.11 「日本におけるジェンダー規範」

女子教育

女子教育研究会FEN 第10回オンラインイベント 「働く」ということとジェンダー  弁護士 岸本尚子様ご登壇

  • ESN Facebook
  • STUDY

研究情報カテゴリの記事

女子教育研究会FEN 第12回オンラインイベント 「女性…

いつのまにか ”探究している”時間になる そんな実践型の…

女子教育研究会FEN オンラインイベント No.11 「…

『探究・PBLコーディネイター研修』(第2期)のご案内!…

女子教育研究会FEN 第10回オンラインイベント 「働く…

女子学生の理系進学に影響を与える要因 山田進太郎D&I財…

「「働く」ということとジェンダー」!!

女子教育研究会 第9回 学習会  2023年8月19日(…

女子教育研究会 第8回 オンラインイベント 「これからの…

どうなる?DX時代の英語教育ウェビナー