鮫島慶太鮫島慶太

Global Standard と Japanese Standard

ESNの懇親会で群馬国際アカデミーの村瀬先生とお話した際に、「CTとは何か?」という話題になった。村瀬先生は海外での研究者としての経験から、「本物と偽物を見抜く力」だと仰っていた。海外でJapanese standardが通用しないことを身を持って経験されてのお言葉で、とても印象に残った。村瀬先生とお会いしてお話出来ただけでも、この会に参加して本当に良かった(もちろん、他の方々の講演も交流も貴重な刺激でした。ただCT教育は今の私にとって最大の関心事なので特に村瀬先生とのお話が印象的でした)。

CTを議論する時、よく話題になるのがグローバルスタンダードだが、これについては、私は「常に順応すべきもの」だと思っていない。もちろん、それぞれのローカルスタンダードに敬意を払い順応すべきなのと同じように、ビジネス上のルールなどとして、ある国際的なstandardがあれば従うことが必要だと思っている。「郷に入っては郷に従え」の言葉通りである。

しかし、何から何まで相手のstandardに盲従すべきかと言えば、そうではない。

海外で買い物をすれば誰でも分かるが、たとえば、接客態度は、ひどい国では本当にひどい。最近は日本でも「おもてなし」文化が崩れているが、売る方も買う方もそれぞれの礼儀が日本にはある。「安い金しか貰ってないんだから仕方ない。サービス欲しければ金をくれ」という文化よりJapanese standardの方が遥かに優れていると思うのは日本人だけではないだろう。

こうした異文化standardの対立が起こる時、CTは果たして有効なのか?

研究会に参加されていた出版者の営業の方が興味深いことを仰っていた。

「先の大戦で敵国の言葉を禁じた日本人の排他的マインドは、零戦を徹底的に研究しつくしたアメリカンマインドに負けた。国際社会での理不尽な英語圏優位の状況でも、排他的マインドではなく、敢えて相手の土俵に乗ることが必要ではないか」

私などが申し上げるのは僭越だが、卓見だと感服した。攘夷だけでは進化出来ない。
保守も必要だが、守るためにも、相手を「見ざる、聞かざる、言わざる」では通用しない。

新自由主義的な価値観を武器に、下品に色々なものを壊したがる輩には強い態度で闘うことも必要だろうが、そんな野蛮な相手ばかりではなく、違うのが当たり前の時代、世界では「ハリネズミ」では淘汰されるしかあるまい。

ただ、先の大戦後、日本が完全に負けた要因として、もう一つ大きなものがあると常々私は思ってきた。それは「特に若者に対する文化・価値観の魅力の発信力」ではないか?受け手にそれなりの教養を要求する様々な日本の伝統文化はもちろん否定されるべきものではなく、保護され継承されるべきものであるが、戦後これほどまでにアメリカナイズされた日本を考えると、ただ「戦争に負けた」というだけでは済まないのではないかと感じてしまう。

Fact とOpinionを厳密に区別しながらFactを共通認識の土台として、

相手との共同作業を通して友好的関係を構築

自らの主張の正当性を訴え国益などを守る

本物と偽物を見分け「自らの正解」を作る

こうしたCTの有用性はいくら強調しても足りないくらいだろうが、日本がアメリカナイズされたプロセスを考えると、CTによって浸食された、というだけでは私にはどうもしっくりこない。

人間の五感、全身的経験に訴える魅力、インパクト

そうしたものが文化の壁を突き抜ける時、standardは大きな浸透力を発揮する。

漫画、アニメをはじめとする日本のサブカルに大きな期待と模範を見るのは私だけではあるまい。

…と、堅い言い方してきましたが、要するに

CTも大切だけど…

日本の良さを、口で言うだけでなく、自信を持って発信しましょうよ!

ということ。

自信持とうぜ日本人!

どちらが正しいか?ではなく

こっちの方が素敵な社会・世界作れるよ!

ということ。

正しさを論理だけで押しつけあうより
よっぽど健全でわかりやすいと思うのですが、いかがでしょう?

そんなことは当たり前?

その通り!でも、その難しい当たり前にチャレンジしなくちゃね!

この記事を書いた人

ESN英語教育総合研究会

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