鮫島慶太鮫島慶太

未来の教育を考えるシンポジウムに行ってきました

株式会社Z会ソリューションズ 後援 ESN英語教育総合研究会

未来の教育を考えるシンポジウム~学習者中心の教育の在り方~
https://www.facebook.com/events/212959379310802/?ti=icl

★ 「未来の教室」~民間教育・公教育・産業・先端研究の垣根なき学びの社会システム
(講演者) 経済産業省 サービス政策課 教育産業室長 浅野大介氏

<経済産業省 未来の教室とEdTech 研究会 第一次提言>
http://urx.mobi/KKFk

□「50センチ革命×越境×試行錯誤」
□「STEAMS×個別最適化」
□「学びの生産性」

今回の教育改革を主導している経済産業省の中枢が何を考えているのか、
直接知りたくて話を聞きに行きました。良い意味で予想を裏切られました。
登壇された浅野大介氏はワクワクする学びを子ども達に経験して欲しい、
純粋にそう思われていることを私は強く感じました。

 

労働生産性の向上、超高齢化社会や国際競争力の低下の現状から産業の活性化の為に教育に変化を、という話だとばかり思っていましたが、少なくとも浅野さんは学ぶことが楽しくて、
そういう喜びを1人でも多くの学生に知って欲しいというpassionを強く持たれているのだと思います。

名刺交換会で少しだけお話させて頂きましたが、その時にも目の輝きに感動しました。
もちろん霞ヶ関には色んな方がいて、浅野さんのような方ばかりではなさそうですが…。
むしろ浅野さんは少数派なのかな?

 

資料にあった「日本社会と教育の課題」については前提となる日本社会の課題とそれを教育がどう解決すべきなのかを短絡的に結びつけてはならないという漠然とした危機感を覚えました。(私の知識不足もあるかもしれないですが)

「日本社会は問題だらけ」→「教育を変えなければ駄目だ」

この図式は至る所で見られますが、資料の中でも「労働生産性」における「資本装備率」やTFP(全要素生産性)などの説明も正確な定義も見当たりません。

 

「社会保障負担を支える原資を生み出す産業界は労働生産性に大きな課題を抱え、その順位はOECD先進国の中で低い状態が続いている」

という資料の文言がありますが、日本の生産性(国際比較の場合には一人あたりGDP?)は1970年代から現在に至るまで、19位から21位の間を行ったり来たりしているだけです。

生産性の問題に限って言えば、

「世界が激変」→「変化についていけない日本社会と日本の教育」→「生産性の低下」

という図式は成立していないように思います。

教育と社会的停滞の相関性について冷静に緻密に分析し、
その上で課題を考えないと、「とにかく日本は負けたんだ。誰のせいとかでなく
1億総懺悔だ!」とヒステリックに変化を求める流れに全てが壊れてしまう可能性も
あると思います。

教育に何が出来て、何が出来ないのか、を個人的には冷静に考え続けていきたいです。

また、「自己肯定感」「自己効力感」という言葉も資料にありますが、
教育が変わり、子どもが変わり、こうしたポジティヴな人間が育つのかと言うと
そうとも思えません。

労働生産性の問題一つを取っても、
日本の「一億総懺悔」のメンタリティーが変わらず
「学校」も「会社」も全否定されているという
意識を植え付けられてしまうような現在の日本の風潮では
おそらく何をやっても「カイゼン」などというものが上手くいくとは思えないです。

ただ、資料はともかく、浅野さんのお話はとても面白かったです。
(浅野さんのお話は資料の説明ではなかったですから)

社会科少年が名門中高から東大・東大大学院に進み、官僚としてプロジェクトに
関わる中で、自分の学びに足りなかったものを痛感し、理系文系を問わず
多くの学問を学び直し、学びの楽しさを感じたという貴重な経験を
なんとか「苦行としての学び」しか知らない多くの若者に活かせないかという
熱い想いをヒシヒシと感じられる素晴らしいプレゼンでした。

エリートの劣化批判や公務員たたきが一部でありますがこんなに優秀で熱い想いを持った人材が日本の中枢にいてくれることに感謝です。

 

★教育理念の「鍛え直し」と「見える化」~確固たる存在の私学を目指して~

海城中高の中田大成先生のお話もとても刺激的でした。
特にブランド力をどう築き上げるかについての具体的な実践は
簡単に真似出来るとは思えないレベルの高い事例で、勉強になりました。
今の自分ではとても考えられるようなものではなく、
もっともっと学ばなければという思いを強く持ちました。

東大合格者数の圧倒的実績がある中で、他の学校と交換不可能な
School Identityを模索し、「中学生の卒論発表」「模擬国連参加」
などのプロジェクトを通して、「ワクワクする学びの体験」を
生徒にどう持たせるかを真剣に考えてこられた真摯な姿勢に
ただ頭の下がるばかりです。

アウトカム重視から計算不可能なことを設計する改革では
平田オリザさんのドラマエジュケーションの話がとても興味深かったです。

先日、内田樹さんの「人口減少社会の未来学」の中での
平田オリザさんの文章に感銘を受けたばかりだったので
余計に衝撃的でした。

また、広報戦略のレベルの高さについては、ただただ、感動しかありません。
こうしたクリエイティブな教員の資質が海城の教育の質をここまで向上させてきた
のだと思うと、教員としての自分に努力が足りないことを痛感させられました。

★学習者中心の教育を実現するために~生徒目線で考える「淑徳与野」の学びの環境~

淑徳与野中高の黒田貴先生のお話は、生徒の日常の学びや成長をどう改善していくかについて
具体的な事例を取り上げながらの説明で、とても参考になりました。
教育は特別な日に食べに行くフランス料理ではなく、まさに家庭料理と考えて改善に取り組むべきだと普段から思っているので、とても共感出来る部分が多かったです。

特に、「権限なきリーダーシップ」については勉強になりました。
立教大学のリーダーシップ教育との連携による「インパクト体験棚卸し」
というユニークな取り組みは、今後時間をかけて大きく進化していくことを
予感させられました。

その他、研修会でお会いできた皆様からもとても良い刺激を頂きました。
ご縁に感謝です。

私の人生は本当に人との出逢いに恵まれているなぁと改めて強く思いました。

以上、長々と単なる感想でした。
最後までお読み頂いた皆様(あまり多くないでしょうが(笑))
ありがとうございました!

この記事を書いた人

ESN英語教育総合研究会

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