鮫島慶太鮫島慶太

シチズンシップ教育はどうあるべきか?

選挙権が18歳に与えられるようになり、若者の投票率の低さや現在の民主主義の停滞とも思える現状に対する悲観的な発信が目に付くようになったと感じる。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65437760V21C20A0I10000/

日経新聞では自由民主主義が経済的豊かさを実現出来るとは限らないことから、世界の中で民主主義がマジョリティではなくなりつつある現状を『民主主義のパラドクス』として上記の記事で紹介している。 また、コロナ禍でも民主主義は他の政治システムに比べ脆弱さを露呈していることも以下のロイター通信の記事などで紹介されている。

https://jp.reuters.com/article/global-economy-trust-idJPKBN2JS0DJ

こうした状況の中で日本でも、世代人口の違いから生まれる若者軽視と思われる政策の優位を『シルバー民主主義』と称し、若者達の投票率の低さに理解を示す発信も目立つようになった。 最近人気のインフルエンサー成田氏の発信もかなりの説得力を持って支持されているように思える。

https://youtu.be/bBvGbCqRvWI

NHKでも、以下のような記事で若者達の低い投票率を課題としする発信を行っている。

https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n12893146ddae

このNHKの記事の中では、若者の政治意識の低さを課題としつつも、若者が少数派であることから来る諦めへの一定の理解を示しつつ、投票率向上に向けたITの活用や学校での政治教育の充実を提示しているが、私個人から見ると、恐らくそれでは何も変わらないように思える。 何故か?

「民主主義=個々の利益や組織の利益の最大化を目指すシステム」 という理解が変わらなければ、恐らくどの世代、どの属性の投票率が上がったところで、分断は必ず起こり、社会の劣化は止まらないからだ。 組織票が力を持つ日本の民主主義の土壌では、民主主義本来の良さが発揮されることは恐らく永遠にないのではないか?

ジョンロールズの『無知のヴェール』 自分が誰であるのか分からない前提で考える。

自分は金持ちかも知れないし貧乏かも知れない。

自分は男かも知れないし女かも知れないし性的マイノリティかも知れない。

自分は老人かも知れないし子どもかも知れない。

自分は移民かも知れないし少数派民族かも知れないし多数派民族かも知れない。

必要なのは、子ども達へのシチズンシップ教育ではない。 大人も含めた民主主義への向き合い方のアップデートだと思う。 これが実現しない限り、芥川龍之介の描いた『蜘蛛の糸』の地獄絵図は、この日本だけでなく、世界で広がっていくようにしか思えない。

エマニュエル・トッドは最新作『第三次世界大戦は既に始まっている』の中で以下のような内容を述べている。 https://amzn.asia/d/5DSqTHd

現在の世界にあるのは、権威主義民主主義と寡頭民主主義の2つである。

誰であっても尊厳を持って生きていける世界へ向かうことはとてつもなく困難なことで、私のような小さな個人が何を考えても、何を発信しても変わらないだろう。 しかし、このままでは、明日にでも理不尽な暴力や理不尽な運命で人生を壊されるのは、自分や自分の大切な人なのかも知れないのだ。

若者の教育は大切。 しかし、問題の根は今のこの劣化民主主義社会を作り上げてきた我々大人達の方にある。 それを無視した上から目線の『和製シチズンシップ教育』などでは、分断は更に深まるしかない。

和製フレキシキュリティに向かって。まだまだ私自身が学ぶべきことも個人としてやれることも途方もなく多い。が、生きてる限りそこに一歩でも近づくような生き方をしたい。 現状ではとてもそんな壮大なことは言えませんが。でも、怠け者の自分を奮い立たせる為にも言っておこう。

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