女子教育研究会 第8回 オンラインイベント 「これからの生き方・働き方と新しいロールモデル」を終えて

今回は、大手IT企業でコンピューターエンジニアとしてキャリアをスタートされた後、ダイバーシティ経営戦略、女性リーダー育成に取り組まれている株式会社アワシャーレ代表取締役の小嶋美代子様をお招きし、「これからの生き方・働き方と新しいロールモデル」について考える学習会を行いました。

​登壇者プロフィール:https://onl.bz/6iVP2LF

<イベントの振り返り>
前回のオンラインイベントで、神奈川保健福祉大学の津野香奈美先生による「リーダーシップ」の負の部分に焦点を当てた学習会を行いました。そこで問題視されていた「リーダー」は、従来の日本社会においてよく見られるロールモデルと強く結びついたものでした。女性にはロールモデルが少ないことがエンパワーメントにおいて不利である、との指摘はよく耳にしますが、逆に従来型のリーダーシップを発揮する古いロールモデルが最早通用しないのであれば、性別を問わずロールモデル不在であることは変わらなくなります。これからの時代に必要とされるリーダーシップを発揮する「ロールモデル」とはどのようなものか?ということについて、新しい生き方や働き方を実践されている小嶋様より学ばせていただく機会としてイベントを企画しました。

学習会では

① 小嶋様ご自身のロールモデルが幼少期から現在に至るまでどのように変化してきたのか?
② ロールモデルとはみんながなりたい人でなくてよい
③ ロールモデルとは選択肢のひとつであり「考えるヒント」である

というテーマにそってお話が進みました。

まず、「女性の自立」とロールモデルという観点からは、「経済的自立が選択を広げる」ということを小嶋様がご自身の母親から学ばれたことが原点であるというお話がありました。
まだまだ専業主婦が多かった時代ですから、身近なところに「働く女性」というロールモデルがいたという人ばかりではないと思いますが、母親でなくとも、幼少期には幅広い人生の選択をしている大人と接する機会があるということの重要性を改めて感じました。

リーダーシップの経験としては、ガールスカウトのお話がありました。
ガールスカウトでは特別な人が選ばれてリーダーをするのではなく、ほぼ全員がリーダーとしての役割を経験する。
リーダーのふるまい、社会課題をどう解決するか?という視点から女子のリーダーシップを考えてこられた小嶋様にとって「リーダー」には多様なタイプがあることを知る機会が貴重であったとのことでした。「リーダーは機会があれば巡ってくるもの」という表現が非常に印象的で、「管理職になりたがらない女性」「管理職になりたがらない男性」ということが話題になりますが、そもそも「リーダーとは自ら望んでなるべきものなのか?」という根本的な問題に対する問いが私の中では生まれました。

「手を挙げてリーダーをする」という人にマネージメント能力があるとは限らない。やってみなければ分からない。ならば、「機会があれば巡ってくるもの」というガールスカウトの組織が実践する構造そのものが上手く機能しているのではないか?ダメなら反省して学べばよいし、向いていないことが分かればドンドン替われば良い。高流動が昨今話題になりますが、「リーダーとは失敗出来ない人」「やる気がある人がやるのがリーダー」という仕組みそのものを見直すことで、組織内のリーダーシップが上手くUpdateされる可能性もあるように感じました。

またロールモデルが不在であった学生時代に対しては、「親と先生しか出会いがない環境から別の大人との接点があれば」という後悔と同時に「ロールモデルが見つからない」という時間も貴重であること、時間が経過して後になって親や先生の中にロールモデルとなるようなものが見つかることもある、という発信があり、学力という課題と同様に「積み上げモデル」「リニアモデル」ではなく「リゾーム型(土中で根をはりいつどこで繋がるか分からない)」で考えるべきこともあるのではないかと個人的には新しい視点を頂きました。

また、「誰かが連れてきたロールモデルは上手くいかない」「ロールモデルは沢山いた方がよい」「ロールモデルは自分よりずっと若いケースもある」「ロールモデルに出来る人を自分から動いて探せば上手くいくこともある。必要なのは見つける力と機会」「同じ場所で同じような人と出会っても、ロールモデルが見つからない人もいる」といった小嶋様の経験から発せされる一つ一つの言葉が非常に大きな説得力を持って参加者に伝わっていくのを感じる場面が多かったです。

私自身のこれまでの進路指導でも、ロールモデルを意識した仕掛けには多く取り組んできました。
「斜め上の存在としてのチューター」「社会で活躍する卒業生社会人講演会」などはその代表的なものです。
でも、それってどのくらいの生徒に意味があるものなんだろう?ということを改めて考えさせられました。

小嶋さんのお話に出てきた「ワンピースのキャラクターからロールモデルをというと盛り上がるんです」という言葉が印象的です。
私たちは、「このような立派な大人になりなさい」という目線で子どもたちにロールモデルを準備してこなかったか?
そして、それが本来なら不要な抑圧・劣等感などを子どもたちに植え付けていないか?

そもそも、新しい道がドンドン出来る今の時代に、もっと自由になりたい自分を探せるような仕掛けこそが必要なのではないか?

研究会をやる度に新たな問いが生まれていきますが、分からないことが増えるのはワクワクします。
小嶋様、参加者の皆様ありがとうございました。

 

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