鮫島慶太鮫島慶太

「夢があふれる社会に希望はあるか」(児美川孝一郎 著 ベスト新書)キャリア教育の問題の底にあるのは何か?

面白かったです。1時間程で一気に読んでしまいました。

児美川先生とは直接面識はないのですが、先生のご講演を聞く機会があり
その時おっしゃっていた、

「なりたいもの症候群」

「なりたかったものになれなくても、大半の人は幸せになれる」

といったお言葉がとても印象に残っていました。

今回、先生の最新の著書を読んでみて、改めて「その通り」と
納得することが多かったのですが、それは、私のキャリアを振り返った時に、
まさに自分自身が体験してきたことそのものだったから
だと思います。

□ 時代の空気=「自分らしさ」⇒ 自分にしか出来ないことにこだわる

□ 「人のために生かされる恐怖」「人のために生きなければならない環境へのストレス」

□ 時代の空気から自由に=3つの要素のバランス生成

⇒ ライクワーク: 自分の好きなことをやる
ライスワーク: 食べるために働く
ライフワーク: 社会の中で、他者のために自分を活かす

80年代は私には辛い時代でした。母子家庭で経済的余裕がなく、毎日のように
バイトにあけくれていた私のそばには、「インドまで自分探しに行った」
「スカイダイビングをして世界観が変わった」といった「自分探しのエキスパート」が
「うようよ」いて、「お前つまらない奴だなぁ」と言われている気が常にしていました。

親の影響でマスコミへの道を考えたこともありましたが、「攻略本」などの中には
「徹夜マージャンで勝負強さを発揮するといったところに自分の個性のPRポイントを」
といった話まであり、くだらないと吐き気がしつつも、マージャンなんてやる金も時間もないし、
と生まれた時代や境遇を恨んだりした時期もありました。

「自分らしく生きられない」「自分のために自分を生きられない」

そうした思いが若い頃の私の中で大きな不満としてくすぶっていた記憶があります。

それは、「夢が見つからずに苦しむ若者」や「夢を実現出来ない無力感に苦しむ
若者」の中に芽生える感情と共通したものがあるのかもしれません。

ただ、「目の前の生徒達のためになりたい」という気持ちから、教員として自分にやれる
ことを全力でやり続けることを通して、「自分のため」「人のため」といった
二元論から徐々に私は自由になれたような気がします。

教員になったのも、私にとっては「キャリアプラニング」ではなく
「プランドハプンスタンス」だった訳ですし。

児美川先生は、「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」の3つの
円が重なるところで夢が見つかるのがベストだと書かれていますが、
私自身が苦しみながら到達したことは、まさにそうしたことだったと思います。

実は、二中高時代の卒業生の一部は「同窓会でのカミングアウト」で知っていますが、
今の私は「パラレルキャリア」を実践しています。
こんな言葉見たことも聞いたこともなく、今回この本を読んで知ったのですが、
「これ私のことだ~」とびっくりしました。
注目され始めてたんだ、こういう生き方(笑)。

学生時代に実は大きな「夢」があって、それは教員をやることで実現出来る
ものではなかったのですが、40歳を超えてやり始めたことがあります。

もちろん、そちらをメインにすることは今の私には出来ませんが
でも、やっている時の楽しさ・充実感は教員の仕事では味わえないもの。
しかも、一人ではなく、同士とやれることが、私にとっては奇跡的な幸福です。

この本は若い人に読んで欲しいし、激務に追われている多くの大人にも
是非読んで欲しい素晴らしい本だと思います!

さて、この本の中で「夢を持つことを異常に煽る脅迫社会」=日本 のこと
が出てきます。

これって、「キャリア教育」だけの話でしょうか?

「グローバル人材」「アクティヴラーニング」「発信型人材教育」

日本って、いつも「脅迫社会」なのかな?と改めて感じてしまいました。

「一億総火の玉」「ぜいたくは敵だ」の時代から、あんまり変わってないのかな?

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