鮫島慶太鮫島慶太

2022/6/11 女子教育研会FEN 第2回オンラインイベント 「中高女子の特性についての通説につて考える」概要

オンライン学習会:中高女子の特性についての通説について考える

ファシリテーター・資料提供と解説は私が努めました。

お忙しい中、女子校の先生方、共学校の先生方、数社のメディアの方々、女性起業家やジェンダー研究者の方々と多種多様な皆様にご参加頂きました。

 

まず、本研究会を発足させた時点での私の問題意識について共有させて頂きました。

① 女子校の存在意義以前に公教育の存在意義 
⇒ 新自由主義社会の中で教育のサービス化とともに崩壊
② 格差拡大 
⇒ 自分自身が行ってきたこと=「格差の再生産」
③ 搾取社会×ジェンダー課題大国
⇒ 正規酷使×非正規搾取= 日本型雇用の崩壊
⇒ 教え子達の将来への不安

 

今回扱ったのは以下の3つのテーマです。

①女子の自己肯定感は低いのか?
②女子は理系が苦手な子が多いのは本当なのか?
③女子は先行逃げ切り型、男子は追い込み型というのは本当なのか?

現場の感覚ではなく、論文や研究結果を紹介しながら、女子教育の現場にある教員が気をつけなければならないことや、Updateしなければならないこと、学校の問題ではなく社会構造そのものや家庭の課題と考えられるものなどについて、参加者の皆様と考えることが出来た有意義な時間でした。

スライド数は50枚弱。以前から少しずつ集めていた資料をまとめていましたのでそれらを整理しながら資料としてまとめて皆様に今後も考えて頂く資料としてご紹介しました。

【共有した資料】

【発表の概要】

①女子の自己肯定感は低いのか?

□ 「自己肯定感」についての議論の前提の確認:定義・測定可能かどうか・自己肯定感の高低と善悪・自己肯定感の向上が教育の課題ではなく、成長の阻害要因としての低い自己肯定感を課題とする。

□ 自己肯定感についての鮫島の定義:自己肯定感とは 未来に向かって変化を恐れず生きる力

今後吉野先生をお迎えした読書会でも議論を深めるために資料を多数共有しながら、自己肯定感について考えていく足がかりと出来たのではないかと思います。

特に思春期を迎えて低下する女子の自己肯定感については、女子校がそうした流れと無縁の場を提供出来ているのかどうかも含めて、丁寧に検証していく必要性を感じました。共学校の先生のご参加もありましたが、むしろ共学校で理系特進クラスで女子が優位というお話も頂き、女子校だから女子の成長に適した場を提供出来ているとは限らないということも改めて考えていく必要があると感じました。

また、Big5などの気質調査から、「生まれつき女子の自己肯定感を左右する因子がある」わけではなく後天的な要因が特に女子の自己肯定感を下げているのではないかという私の仮説を裏付ける資料も提供させて頂きました。

②女子は理系が苦手な子が多いのは本当なのか?

クロード・スティールのスティグマ除去実験の紹介から話を始め、PISAの結果、OECDの理系進学についてのデータ、おおたとしまさ さんの「21世紀の女の子の親たちへ」における仮説(イスラム圏で女性の数学・科学の学力が高いのは男女別学だから)の検証、Newsweekの記事、脳の性差における国内外の研究、男女共同参画局資料、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の横山教授のグループの研究などを通して、女子の理系適性についての通説についての検証を行いました。

イスラム圏の数学的リテラシー・科学的リテラシーで女子が男子の結果を上回っていることは男女別学というよりも成績による進路の強制振り分けが行われていることが要因として強いと思われること、最新の脳科学では性差はほとんど否定されていること、にも関わらず小数バイアスが女子の学力特性について無視出来ないバイアスを生み大きな阻害要因となりうることなどについて、参加者の体験やご意見も伺いながら、今後の議論に繋げていくキッカケとなったと思います。

今後の学習会では、ベネッセコーポレーション様のご協力も頂きながら、様々なデータからこの課題について考えていきたいと思っています。

③女子は先行逃げ切り型、男子は追い込み型というのは本当なのか?

MBTI,エニアグラム、ストレングスファインダーなどのタイプ別診断における性差についてデータを共有しながら考えることが出来ました。性差<個人差と判断出来るにも関わらず、「男女の共通部分」ではなく「男女の違い」が大きく強調されている点を現場の課題として共有することが出来ました。

また、ご家庭や地域にある社会規範やステレオタイプ、Hidden Curriculumとして「女性の管理職が少ない」「女性の理系担当教員の性に偏りがある:数物が少ないのではないか?」といった指摘もあり、今後の学習会で新たなテーマとなりそうな課題も出されました。

途中、子どもが乱入するなどトラブルもありながら、参加者の皆様に暖かく支えて頂き、第2回目のオンラインイベントを無事に終えることが出来ました。次回の登壇者の石井先生にバトンをお繋ぎしたいと思います。

この記事を書いた人

ESN英語教育総合研究会

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