日経新聞に以下の記事が掲載されました。
2026/1/26 大学の推薦合格、ミスで幻 高校への損賠訴訟
「積み上げた成果が無に帰した」 失われた受験先の選択
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO93975070U6A120C2CM0000/
今回の報道をめぐって、裁判の事実関係そのものは整理されているのだと思います。受験生が不利益を受けたことも重く受け止める必要があります。ただ一方で、「なぜこうした事案が起き得るのか」という構造的な背景については、十分に共有されていないようにも感じました。以下はあくまで一般論であり、私個人の問題提起です(所属組織の見解ではありません)。
指定校推薦業務は、年々「情報過多」と「形式の多様化」が進んでいる
指定校推薦に関する大学からの書類は、書式・内容・要求水準が大学ごとに大きく異なります。近年は民間英語試験の扱いを含め、条件がより細分化され、情報量も増えています。中には「要項に記載」とだけ示し、分厚い要項を送付する形式の大学もあります。依頼校の数は100校を超える高校も珍しくなく、送付時期も例年6〜8月が中心とはいえ、9月以降に届くケースもあります。こうした情報を各校が通常業務と並行して処理しているのが現状です。
多くの高校で「情報の再整理」が必要になっている
大学からの書類には、卒業生の個人情報が含まれていたり、「校内選考通過者にのみ共有」といった取扱注意情報が記載されていることもあります。そのため、多くの高校では原本をそのまま配布せず、Excel・Word等に転記・集約して校内向け資料を作成します。しかしこの作業は、仮に入力担当者を複数確保しても、依頼校数が多いほど作業負担が急増します。情報量が増え続けていることを考えると、今後さらに業務負担が重くなる可能性もあります。また、被推薦者がいない場合に「その旨を別途郵送で回答」と求められるケースもあり、悪意はなくとも現場の事務負担を押し上げる要因になっています。
こうした環境では「ミスが個人の注意力だけで防げる」とは言い切れない
もちろん、指定校推薦で最優先されるべきは受験生の利益であり、進路希望の実現です。そこに異論はありません。ミスが許されない業務であることもその通りです。
ただ、業務が複雑化し、情報が散在し、作業が人手と転記に依存する構造のままであれば、同種の事案は再発リスクを完全には消せません。個々の学校の努力だけに依存する設計には限界がある、という問題です。
全国的に解決するなら、DXで縮減できる余地が大きい
全国レベルでの再発防止を考えるなら、課題解決の仕組みとしては比較的シンプルだと思います。
・指定校推薦の登録プラットフォームを整備
・全国の高校をコードで登録
・大学は依頼先高校ごとに要件・要項PDF・注意事項を登録
・高校は依頼校を選択
・生徒は高校コード+パスワード等で閲覧可能
こうすれば大量の郵送・転記・再編集を大幅に削減でき、現場の業務負担も下がります。結果として、受験生にとっても情報提供が安定しやすくなります。
責任の所在だけでなく、再発を減らす「設計」に焦点を当てられるか
報道はどうしても「被害を受けた受験生」と「ミスをした高校」という二項対立になりがちです。しかし、それだけでは再発防止に十分つながりません。本当に問うべきは、個別の注意喚起にとどまらず、現場の過重な事務負担を前提とした運用を続けるのか、それとも制度設計として更新するのか、という点ではないでしょうか。


