「ESAT-J」は都内公立中学3年全員を対象にしたアチーブメントテストで、結果は都立高入試に活用される。都内197会場で行われ、約6万9千人が受験した。テストはタブレット端末に解答を吹き込む形式で、前後半の2組に分けて行われた。事業主体は都で、民間事業者ベネッセコーポレーションと共同実施している。
イヤーマフ越しに他の人の解答が聞こえた
12月5日、テスト当日の実態調査を行った、ESAT-Jの都立高入試への活用中止を求める都議の議連と3団体が共同で会見を開いた。調査は、テスト実施日からインターネット上で1週間行い、回答数は478件。回答者の6割が中学3年生、3割が保護者だ。任意の回答とした会場名についても359件の記入があったという。
会見で「調査には、試験が公平・公正に行われたとはいえない事例が多数寄せられた」と議連事務局長の戸谷英津子都議(共産)は報告した。
そうした事例の中で、最も多かったのは「イヤーマフ越しに他の受験者の解答音声が聞こえた」の166件。次に「前半組と後半組の情報遮断不全」が92件で、具体的には「前半の人たちの回答が丸聞こえでした」「後半組は前半組の声を聴いて試験の問題を予測できていたのでは」「前半の人と後半の人で休み時間中情報が提供されていた」などと記入されていた。加えて、「録音確認の際に周りの人の声が録音されていた」も55件あった。
テスト会場で受験生は、イヤホンマイクと防音のためのイヤーマフを着けた。しかし、テスト実施後に筆者が取材した、ESAT-Jを受験した女子生徒は、次のように話す。
「テスト問題の中に、ホテルの絵を見ながらレストランの階数を答える質問がありました。『ファースト』と答えたら、周りの人たちの『セカンド』という声が聞こえてきて『失敗した…』と思いました」