鮫島慶太鮫島慶太

2020年入試改革に向けて 2016年東大・一橋大記述問題に思うこと

動画ページで2016年一橋大新傾向の自由英作文と
東大の要約・和訳問題の解説を扱った。

http://esnenglish.world.coocan.jp/englishmovie.html

予備校の解答とは切り口をかなり変えて作成してみたので
これでよいのかどうか多少心もとないが、それでも
1つの解答の可能性としては提示できたのではないかと思う。

(卒業生の皆さん、他校の先生方、ご意見があれば
是非頂けると助かります!)

東大にしても一橋大にしても「記述力重視」の入試を
従来から行っており、多少切り口の変化はあると思うが
2020年の全体の方針転換をむかえても大きな変化はないのかも
しれない。もちろん、Outputで日本語よりは英語を用いたもの
をもっと重視するのかもしれないが。

「記述力重視」は悪いことではないし、今後の日本の若者を
世界に通用する人材、よりよい日本社会を創造する人材として
育てるうえで必要なことだと私も思う。○×型の問題ばかり
解いてきたような人材ではなく、「答えを創造出来る人材」
こそ必要だと思われるからだ。

ただ、授業動画を作成していて、あるいはこれまで生徒を
指導してきて、大きな問題点、いや「課題」も感じざるを
得ない。

「記述型」の試験では得点誤差が非常に大きいということである。

昨年度の高3生の授業では、和訳・要約・自由英作文などの
演習を毎時間行ったが、全ての得点を分野別にデータとして
保存してある。

それを見ても得点のバラツキが非常に大きい。
難関大に合格した学生でも、毎回安定して高得点というのは
珍しい。本校がお預かりしている生徒さんの学力が突き抜けた
学力ではないとしても、東大や一橋大でさえボーダーラインに
多くの学生が存在すること、飛び抜けた学力の学生はそうした
大学の合格者ですらごく一部だということを考えると、多くの
学生が本番の出来により得点が大きく上下しているのではない
かと思われる。

また生徒の側から考えてみると、「学力伸長の実感を持ちにくい」
ということも問題だ。勉強しているのだから、学力が落ちている
ということはないのだが、要約や自由英作文の得点が勉強すれば
するほど伸びているとなかなか実感出来ない。これは学生の側か
ら見ると、辛い。達成感がなかなか得られないのだ。

これは英語だけでなく、国語でも言えることだが、簡単に言うと
努力して築き上げてきた学力よりも、その場での問題との
相性による得点誤差の方が大きく出てしまう記述問題に対して
学習動機を維持するのが難しいということになってしまいがち
である。

私は、課題は学生ではなく出題者側にあると考える。
要するに普遍的な評価法を学生の側に提示出来ていないのだ。

特に入試では総合点は分かっても自分の書いた答案がどう評価
されたのかを知ることが出来ない。各予備校が再現答案を材料
に得点を推定し採点基準を推定して指導に役立てているが
それが精いっぱいのところで、正確なところは誰にも分からない。
恐らく大学によっても異なるのだろう。

仮に大学によって評価が異なるのだとしても、それはそれで
構わない。大学によってアドミッションポリシーは異なる訳だし
求める学生の学力も違ってよい。それでこそ大学の多様性は
保証されるし、日本の人材育成の多様性も実現する。大いに歓迎だ。

しかし、「何がどう評価されたか分からない」という状況を
放置するのはいかがなものか?学生には「○×ではない学力」
を要求し、自分たちは点数しか発表しない姿勢は明らかに
不誠実だし、自分たちの評価に対して自信が持てないのか?
と勘ぐりたくもなる。

大学入試で記述問題を出題されている担当者にお願いしたい。
少なくとも採点基準を発表して下さい。
そこに各大学の考える「思想」が必ず出てくるはずだから。

そんなことをすれば、予備校産業を中心とした「対策競争」
を加熱させるだけだとお答えになるのでしょうか?
いやいや、すでにそうなっています(笑)。
受ける教育による得点力の方が、参考書によって独自に創り上げる
学力よりも大きくものをいう問題を出題されているわけですから。

変わらなければならないのは子ども達ではなく
大人の側ではないか?

この問題に限らず、教育が論じられる時には
どうしてもそう思ってしまうのは私だけでしょうか?

この記事を書いた人

ESN英語教育総合研究会

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