教職課程の必要単位見直しへ 免許取得の負担軽減、文科省 という記事について

教職課程の必要単位見直しへ 免許取得の負担軽減、文科省  2025/05/23

上記のニュースに私個人のFacebookで以下のようなポストをしました。

小手先。教員免許取得に必要な単位負担軽減には必ずしも私個人は反対ではない。反対派の『教養科目廃止論=教員の教養低下』とも思わない。けど、この文科省の方向性は、小手先と感じますね。
和風科挙と化した大学入試改革もそうだけど、日本はなんで入り口ばかり問題にするんだろう。
大学院卒業を教員免許取得の要件とする外国のモデルにも魅力や可能性を感じない。
教員に限らないけど、なんで『即戦力』ばかり欲しがるんだろう?なんで『学び』を入口までで考えるんだろう?
成長は自己責任?もちろん、自分が努力することは必要。けど、場を与える社会であって欲しい。誰も取り残さないとはそういうことだろう。

このポストに、教員の質が下がる、そもそも教員になる人たちの質が低いといった声も頂いたのですが、私の主張は、教員生活スタートまでの入口(大学・大学院)の一括教育ではなく、生涯教育として質の向上につとめるべきだというものです。ただ、文科省の政策を『小手先』と斬った訳ですから、以下のような反論もあるかも知れません。

文科省の改革を「小手先」と切り捨てているが、それは現場の逼迫した実態(教員不足・業務多忙・若手教員の離職)への対応としては現実的であり、「理想論で動けない行政の苦悩」への理解が欠けている。制度変更は時に「理想より先に応急処置が必要」という現実主義に基づく。

私は官僚をしたことがないので、実際のご苦労は分かりません。ただ、上記のような現実があることは容易に想像できます。
そもそも、この課題は『エッセンシャルワーカー不足』という課題であり、教員に限ったことではありません。医療・インフラ・介護などあらゆる分野で似たような課題が既に存在していると考えます。
その課題に部分的な応急処置をするだけでは、問題解決にならないばかりか、現在の社会のゆがみを更に大きくしてしまう可能性もあると考えます。

以下、私個人の考える『代案』を提示してみたいと思います。単なる現場の一教員の戯言かも知れませんが、どこかに届けばと考え発信させて頂きます。

フレキシキュリティ社会を前提とした教職を含むエッセンシャルワーカーの学び保障制度改革案です。 

教職を含むエッセンシャルワーカーの学び保障制度改革案

はじめに
エッセンシャルワーカー(教職、介護、保育、医療、インフラ従事者など)は、社会の根幹を支える職種でありながら、キャリアの中途での学び直し(リスキリング)や質の高い再教育の機会が乏しい。これは結果的に「一度レールから外れたら復帰できない」社会構造を助長している。

問題点の整理
1. 形式的な教育機会
 現職者向けの研修は内容が抽象的・汎用的で、実務に活かせないことが多い。
2. 経済的・時間的な障壁
 家庭・勤務形態の制約により、大学や研修機関に通うことが困難。
3. 社会的ステータスの軽視
 学び続ける意志や能力が軽視され、「学歴」や「最終資格」による評価が支配的。

改革の基本原則
教員や介護士、保育士に限らず、すべてのエッセンシャルワーカーに継続的な学びの権利を制度として保障する。
「学び直す人」を社会的に正当化する文化・制度の構築。
学習が個人の負担ではなく、社会の投資であるという発想への転換。

制度的提案
1. リスキリング・パスポート制度
一定年数勤務ごとに、希望者へ有償での学び直しバウチャーを発行。
地方自治体・大学・職能団体が共同運営するオンライン・対面混合型教育に使用可能。

2. キャリア循環支援モデルの導入
一定年数での職種交代や実務外キャリアを支援する制度(例:教育から行政へ、介護から保育へ)。
離職者向け再統合プログラムを整備し、潜在的有資格者の再登用を促進。

3. 学習履歴の可視化と評価制度
単位・資格に依存しない「学習履歴ポートフォリオ制度」導入。
能動的に学んだ内容を業務改善や研修設計に反映できる仕組み。

教員養成への具体応用
教職課程を「卒業前にすべて終える」一括型から、「入職後の数年にわたって段階取得する」分散型へ。
大学院修了の一律要件化ではなく、実務経験と学びの総合評価による免許制度へ移行。

結びに
「スキルが不足しているから終わり」ではなく、
「スキルが不足しているなら、学びの機会が保障されている」社会へ。
これこそが、教育・介護・保育を支える人々の尊厳と成長を両立する制度的基盤となる。

 

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